京都精華大学人文学部特任教授。思春期の子どもを中心とした臨床を行うとともに、テレビや雑誌で映画評論、漫画分析などさまざまなメディアで幅広く活躍。近著に『心がフッと軽くなる瞬間の心理学』(角川SSC新書)などがある。簡単に自分の性格がわかる!?携帯サイト「名越康文のココラボ」も好評。
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父親はスポーツマンでとても勇気に溢れていましたが、私はというととても怖がりな子どもでした。公園に連れて行ってもらっても、滑り台から降りられませんでした。幼い時から日常生活を越えた不思議な感覚やつながりを感じる事がありました。
漫画・音楽が好きで、医療には興味がなかったのですが、母方が医者の家系だったので、私も医者になるのだと思うようになりました。しかしながら、どんなに勉強しても「どんな病気を治しても、人間はどうせ死に負ける」と考えるようになり、だんだん勉強をしなくなり、大学もやめようとも思っていました。今思えばその時はうつ状態になっていたのだと思います。その時、友だちにある精神科医のカウンセリングを見学できると聞き、一緒に見に行きました。その時、カウンセリングを受けていた女の子が、先生と話しただけでどんどん明るくなっていく姿を目の当たりにしました。先生の言葉はまるで魔法のように女の子を明るくさせました。そこで初めて「精神科医」という職業を知り、これを仕事にしようと決め、そこからは一生懸命勉強しました。
本を読んでいて、「神の元へは踊って行かなければならない」という言葉と出会いました。意味は「何か苦痛の中にいる時こそ、楽しもうとしてごらん。」というものです。この言葉は私に衝撃を与えましたね。
精神科医になろうと決めた時が、覚悟の瞬間だったと思います。それまでは医者になる・ならないで迷っていたのですが、「精神科医になろう」と決めて、自分がやりたいことを大学の勉強と並行してやっていくということを決心しました。その時からは宗教的・哲学的な本を必要だと感じて、読むようになったり、あるいは話を聞きに行ったりしました。本当に自分が知りたいことを知るということは大切なことなんだ、と目覚めました。それで楽になった部分もあると思います。
私は今までやってきた仕事は、他者の欲望の中にあったのではないかと思います。自分がこんなことをやりたいというのは、漠然としたイメージとしては持っています。それを具体化してくれるのは、絶えず他者なんです。他者と出会い、自分を開示することで、相手との間に何かが生まれてゆく・・・。ですから、自分のやりたいことは他人と自分の真ん中にあると思っています。イメージは持っていて、具体化は他者との間でできていくということです。やりたいことがあっても、それは他人との出会いの中で形を変えていきます。その時に分かるんです。「自分がやりたかったことって、これなんだ」と。自分の中のイメージなんてたかが知れています。でも、それが他人と出会うことによって吹っ切れるんです。
10年以上の付き合いになります。チタンの一枚岩から作ったメガネです。めがねは自己表現の1つだと思っています。
とめ具が特許をとっている特殊な時計。ブシュロンのトークショーの際にいただいたものです。