1987年慶應義塾大学医学部卒業。95年同産婦人科学教室大学院卒業。「ヒト先体反応精子の精製法および定量的評価法」を確立し、博士号取得。東京大学医科学研究所研究員を経て、97年慶大医学部産婦人科学教室初の女性医長に就任。不妊治療を中心とした診療・教育・研究に携わる。2000年自身の基礎研究に基づいた最先端の知識と技術を駆使した不妊治療を実現するため、独立。現在、不妊治療で生まれてくる子ども達の健常性向上を目指して「高品質な精子の精製法および精製精子の機能評価法の標準化」と共に「次世代の不妊治療法」を提唱し、日々の診療と講演活動に力を注いでいる。著書に「不妊治療の真実」(幻冬舎)他。
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今では健康すぎる体になりましたが、幼少時は体が弱く小児科にお世話になることも多かったのです。具合が悪くて体が辛い時に小児科のお医者様は優しく接して辛い体を楽にしてくださり、当時は「魔法使い」のように思っていました。たまたま親戚にも医師が多く、24時間 患者様のために頑張っている姿をみておりましたので、小学校低学年の時には「将来は医師になり、患者様の力になること」が人生の目標になっていました。私は、慶應義塾幼稚舎(小学校です)から中等部、女子高等学校と慶應の附属校から慶應大学医学部に進学しました。一般の方は「附属校はエスカレートで進級できるから楽ね!」とよく仰いますが、医学部への推薦枠をいただくためには学年上位4名(200名中)に入らなくてはならず、とても大変なことで猛勉強しました。医学生になり、発生学の講義で「精子と卵子が受精する仕組み」を分子レベルで科学的に学んだ時、生命の誕生の神秘性に魅せられました。病を治すのが医師の使命でありますが、あえて命を誕生させる医師になることを目指すことにしました。昔から卵子の研究は盛んに行われておりましたが、精子の研究は出遅れており、私が医師になった当時は、産婦人科のみならず泌尿器科領域においても精子学はほとんど研究されていませんでした。そこで、赤ちゃんの半分の遺伝情報DNAを担う精子の研究が遅れていることに大きな不安を感じ、私自身が精子の研究に着手する決意を固めました。
一つは、不妊治療の安全確保です。とくに不妊治療で生まれてくる子ども達の健常性を確保することです。不妊治療のゴールは妊娠ではありません。不妊治療で生まれた子ども達が心身ともに健康に平均寿命まで生きられることです。言い換えれば、不妊治療においては安全が何よりも優先されるということです。医療の根源として安全確保は当たり前のことですが、残念ながら今の不妊治療に携わる医師や医療従事者の多くが、精子品質管理の重要性への認識が低い現況にあります。その結果、品質の悪い機能異常精子を顕微授精に用いている可能性があり、このことが当然出生児へのリスクに繋がります。この現状を危惧しており、危険性がある現状の不妊治療を正すべく啓発活動にも力を注いでおります。具体的には、治療に用いることができる安全な高品質精子の選別・評価の重要性と必要性を周知すべく活動に努力を重ねております。二つ目は、患者様ご夫婦との信頼関係を確立することを大切にしております。このことは生まれてくる赤ちゃんの人権を守るためにも必須と考えているからです。精子を専攻する私の立場から、精子品質を見極めて精子側のリスクを詳細に説明した上で、卵子側のリスクを付帯して説明しております。可能な限りの安全対策を取った不妊治療を提供するためのオーダーメイド治療プランを考案し、ご夫婦との話し合いを十分に行います。その過程で、私主治医と患者ご夫婦との間に確固たる信頼関係が確立された場合に限り、初めて命の誕生に携わる大変に責任の思い不妊治療技術を提供させていただける原点に立てると思って精進しております。
毎日が覚悟の瞬間です。毎日、我が子をつくる思いで命の誕生の根源に携わる仕事をしている訳ですから、正に毎日が覚悟の瞬間です。不妊治療で生まれてくる子ども達の人権が守られて、心身ともに健康に成長されることを祈り、誠心誠意 最善を尽くすことが毎日の覚悟です。仕事人として人生節目の覚悟の瞬間は、大学を辞めて独立した時、2000年のことです。慶應義塾大学医学部産婦人科学教室で女性初の医長というポストをいただきましたので、私なりには一生懸命精進しました。しかし、当時は慶應医学部出身の女性医師が極めて少ない時代(一学年の5%程度)でしたので、昔ながらの男性社会が確立しておりました。私は、慶應医学部大学院や東大医科研で研究開発した精子側の最新技術(黒田メソッド)を自身の出身校である慶應に導入したかったのですが、それは不可能である仕組みが確立していることを知りました。そこで、私自身の基礎研究に基づいた最先端の知識と技術を駆使した不妊治療を実現するために、大学を去り独立することを決断しました。やはり組織という大きな枠の中から独立して一人でやっていく決意を固めた時には、正直 強い覚悟をもった瞬間です。その時の覚悟の強い気持ちがあるからこそ今があるのです、今が頑張れるのです、日々精進できるのです。
自分自身の目標に向かい強い信念をもって頑張り続けられる人、自分自身の欠点を把握できていて自己管理できている人、自分自身の立ち位置を認識して言動を取ることができる人、誠実で素直な心を持ち備えている人、奢りなく謙虚な気持ちを常に持てる人、無償の愛を与えられる人、列挙しだすと沢山挙がってまいります。
近年、不妊治療で通院したことのある夫婦は5組に1組と言われるまでに増加し、年間約4万人(総出生数の約4%、出生児20数人に1人)が出生しております。不妊治療の80%を顕微授精が占めておりますが、そこで忘れてはいけないことは「顕微授精という技術が卵子や胚、将来的に出生児に どのような影響を与えるのか」に関して不明な点が多いまま「受精させるのに必要な精子数が1匹で良い」ことから、その適応が急速に拡大されたことです。一般に普及している顕微授精は、大きな問題(顕微授精による出生児の健常性への影響、具体的には 精子選別基準の曖昧さが出生児の障害を招く危険性があること)を抱えております。欧米では「顕微授精で生まれた児に発達障害を含む先天異常が多い」ことが多数報告されています。日本では厚労科研よる出生児の大規模調査の結果「顕微授精などの人工操作を加えるほど出生時体重が増加する」ことが報告され、ゲノムインプリンティング異常(遺伝子の働きを調整する仕組みに異常が出る病態)による胎児過剰発育である可能性が指摘されています。その因果関係は現時点において明確に証明されたわけではありませんが「因果関係が全くないとも言い切れない疑わしき現状」で今やるべきことは「命を造り出す不妊治療では疑わしきは避けるべきである」という考え方が医師である私の臨床基盤にあります。そこで、生まれてくる子ども達の健常性向上を目指し、危険性がある現状の不妊治療を正すべく啓発活動にも力を注いでおります。具体的には「治療に用いることができる安全な高品質精子の選別・評価」と「次世代の不妊治療法」を提唱し、標準化していくことが私の使命と思い、日々精進しております。
志高く、日々精進して欲しいと思います。自分自身が「何をしたいのか」「どういう立場で社会貢献していきたいのか」を自問自答して、若い時なりの人生の目標を立てて欲しいです。そして一日一日を大切にして、自身の夢の実現に向けて「明るく元気に前向きに」自分に厳しく生きていって欲しいです。無心になって頑張り続けた努力は、裏切りません。
結婚した時に主人がプレゼントしてくれたドクターバックです。収納力がありますので、パソコンも入り、講演の時や出張の際に利便性高く、とても気に入っております。
私の母方の祖父からいただいた手編みのマフラーです。とても軽くて暖かくて愛情一杯の手編みマフラーですから、大好きなアイテムです。冬には勿論活躍の場が多いですが、夏にも冷房が効いた部屋での長い会議の際には 膝掛けとしても手放させないです。