私のカクゴ

昭和大学横浜市北部病院循環器センター 心臓血管外科 教授 南淵明宏
なぶちあきひろ

南淵明宏

奈良県生まれO型
職業:昭和大学横浜市北部病院循環器センター 心臓血管外科 教授
趣味:映画鑑賞、オペラ鑑賞
座右の銘:人生とは「人間とは何か?」を問い続けること。

一浪して奈良県立医科大学入学し1983年卒業。大学病院の研修医、国立循環器病センターの研修医を経て30歳でオーストラリアに飛び出し、34歳の時シンガポール経由で帰国。以後、民間病院で心臓外科医として多数の心臓外科手術を執刀してきた。医療人としてゼロから自分を鍛え直す気持ちで2015年10月57歳で大学病院のポストを得る。

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来歴

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なぜ今の仕事に?

医学部を卒業する際には先輩諸氏から「心臓外科は大変だ!」「不断の努力と持って生まれた天賦の才能が必要だ!」といったマイナスな意見ばかりを聞かされ、激しい嫌悪感と危機感を抱いた体験がありました。もちろん患者の命を直接左右する心臓外科医は大変な仕事であり、責任は重くのしかかってきます。しかしそこで私は、どうせ一回しかない人生、たまたまでも医者になれたのだから心臓外科医になってやろうと決断したのです。

現在の仕事への想い

多くの人の命を救い、または永らえてきました。それは今でも感謝して頂いています。しかし、そうでない患者さんもいらっしゃいます。10年経っても、20年経っても、日常の生活の合間にふと、そんな患者のことを思い出し、そのご家族の言葉を思い出します。そんな時、自分はいったい何をしたのだろう、と自責の念が湧いてくるのです。そんな思いが週に一度は襲ってくるのですが、手術が終わった患者さんで、何年も私の外来診察に定期的に通ってくる患者さんがたくさんいらっしゃり、そんな患者さんは外来診察の前に、長時間待合室で待たされて診察室に入ってくると、「ナブチ先生の顔を見ただけで元気になりました。帰ります。他にもたくさんお待ちですから」と、そそくさと診察室を出て行かれます。そんな人達に、自分は支えられて今日まで来られたと思います。そういった時に、医者が患者を支えているのではなく、医者が患者に支えられているということを実感するのです。

そう思うようになった、きっかけ

心臓外科手術では、思いもよらないトラブルに巻き込まれることがあります。しっかり心臓の血管をつないだはずなのに術後に肺から出血を起こした57歳の男性患者様もいました。手術の後、脳梗塞を起こし、直木賞に投稿しようと思って書き勧めていた小説が絶筆になってしまった74歳の患者様もいました。その心臓と患者様、家族の顔が脳裏に焼き付いており、記憶にはそれしかありません。人間としてそういった患者の人生の物語に、重要な登場人物として参加したという紛れもない事実の積み重ねにより、医師とは何なのだろう?自分は何をやっているのだろう?未だにわからない。と思うようになりました。

あなたにとって覚悟とは

目の前の一瞬一瞬の出来事に対して、誠を貫いてそれが死に繋がったとしても、むしろそれは本望です。つまり、「いつ死んでも悔いはない」というのが私の覚悟です。しかし、自分の命と引き替えにできる仕事、自分の命と引き替えにできる価値ある行為、というものに出会える人は少ないと思います。そういった意味でも、心臓手術に自分の存在すべてをかけられる、そういう積み重ねをやってきた自分は幸福だと思います。

これからに向かって

顧みると、小規模な民間病院で、私は多くの手術の実績を蓄えてきました。そして、心臓外科医として手術を行ってきたという事実を、大偉業を数千人もの患者の胸の中に刻み込んできたのです。それは、地球が消滅しても打ち消すことはできません。これは日本の医療界に影響を与え、改革に少なからず寄与してきたという自負に繋がっています。今回、民間病院から大学病院に移ったのは、これからの世の中をもっと大きく変えてやろうという、より強い野心をもったからです。具体的には、これからもっともっと世の中をかき回す、有能で活気に満ちた後進を育成、散布し、循環を良くしていくためでもあります。そして最終的に私が死んだとしても、新しく優れた物事がたくさん現れるように、社会の利益となる活動をしていきたいと思います。

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お気に入り

拡大鏡

手術の時に使う拡大鏡です。4倍に拡大されて見えます。ちょうど手のひらの面積が眼の画角いっぱいにひろがる程度の拡大率です。これで直径ミリ程度の血管を縫い合わせます。30歳でオーストラリアに渡ったとき、なけなしのお金で買った初代もので、今は5代目です。

持針器

2ミリ程度の細い冠動脈を縫うときに使う針を持つ器具、持針器です。縫うのは大変で技術が必要ですが、プロの仕事は準備ですべてが決まります。手術中に看護師さんに「持針器ちょーだいませ!」とお願いする瞬間はある意味もう手術は終わっているのです。いろいろな言語環境でこの瞬間を体験しました。英語ではニードル・ホルダー、ドイツ語でナーデル・ハルター、中国語でチージンチー、おフランスではポルトエグイー。勝利宣言の言葉です。