1976年に東京医科大学医学部を卒業し、自治医科大学消化器一般外科に入局。昭和天皇執刀医を務めた森岡恭彦教授に師事。1983年に筑波大学臨床医学系乳腺・内分泌外科学講師となり、2004年に助教授、2006年5月に病院教授に就任。2009年5月、筑波メディカルセンターのブレストセンター長に就任し、2012年4月に専門副院長に、2016年3月に定年退職。同年4月、つくば国際ブレストクリニックを設立し、院長を務めている。
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小学生の頃から虫や動物が大好きで、理科の授業には夢中になりました。中学生になると、動物好きだけでは社会に貢献できないと考え、医師を目指すようになりました。父親も医師であり、軍医としてフィリピンに派遣された経験があります。帰国後は東京での活動を考えていましたが、村民たちからの懇願に応じて、小口村にとどまることを決意しました。自分を育ててくれた村民に恩返しをしたいという思いからです。東京医科大学を卒業した後は、父の影響もあり、僻地医療に携わるため自治医科大学の外科学レジデントとして働き始めました。しかし、29歳の時に直腸癌を患い、僻地での勤務が困難と考え、乳腺外科学に転向しました。その中でも、得意とする物理学を活かす超音波医学に没頭しています。
1つ目は除痛です。29歳の時に直腸癌の手術を受けた経験から、患者の痛みや気持ちを理解することができるようになりました。手術当日の夜、自らも涙を流しました。その涙は、自分よりも年上の患者に「頑張って」と声をかけていたことへの反省から湧いたものでした。励ましよりも痛みを理解し、患者に寄り添うことの重要性を実感しました。以来、痛みの少ない採血や優しい触診方法、手術後の痛みの軽減に心を配るようにしています。2つ目は手術は最後の手段です。どんな場合でも、手術は最終手段です。できるだけ手術を避け、他の治療方法を模索しています。3つ目は禁酒です。手術の前夜は、体調を整えるためにお酒は断っています。手術当日の夜は、不測の事態に備えて一切飲酒はいたしません。私は月曜日、水曜日、金曜日に手術を行っていましたので、結局、土曜日しか飲酒はしませんでした。
医学の国内学会での発表時、当時の学会長から厳しい批判を受けました。「君の発表は綺麗すぎる、なにかバイアスがかかっているに違いない」と言われ、私は当時29歳の若輩者、その言葉に打ちのめされ、帰宅いたしました。しかし、帰院後、指導医からの励ましもあり、国際学会での発表を勧められました。英語に自信がないと逃げ回りましたが、抵抗も虚しくロンドンに向かうことになりました。国際学会の集会場には学会長もいらっしゃいましたので挨拶をしましたが、彼には冷たく「君、来たのか」とあしらわれてしまいました。やはり私が来るようなところではないのだと再び落胆しましたが、学会のプログラムや発表を聞いて驚きました。私の発表と学会長の発表がほぼ同じ内容だったのです。自分の考え方が認められたという喜びがありながら、同時に、国内発表に甘んじていることの危険性を感じ、それ以来、国内で発表した研究は国際学会でも発表すると決意しました。
議論は建設的にする方です。学生時代は理屈っぽく沢山の学生と議論していました。その夏休みに熊野に帰省した時に、母に大学でこのような議論をし、論破したと自慢したことがありました。その時に母から「お前はアホや、議論に勝ってもしようがない、議論に勝っても相手の心が離れては議論した意味はないでしょう。議論に負けても相手の心をつかめればそれでいいんだよ」といわれ、愕然としました。Argumentはいけないですね。何事においても建設的な話し合いが大切です。それには自分の意見を押し付けてはいけません。相手を尊重し、寄り添う心が必要です。
乳房超音波を乳癌検診に導入し、早期の浸潤癌を多く見つけたいと考えています。茨城県では超音波による乳癌検診を導入し、成果を収めていますが、全国的にはまだ超音波による乳癌検診は普及していません。私たちは全国の多くの医師に超音波の威力を理解していただき、乳癌による死亡率の減少を実現したいと考えています。また、小さな探触子を用いて乳癌の部分切除における切除量を必要十分な量にまで縮小させ、乳房術後の醜形を防ぎたいと考えています。超音波誘導下の針生検においては疼痛を訴える患者さまも少なくありません。そのため、疼痛のない検査技術の普及を推進し、患者の負担を軽減したいと考えています。
日本女性は世界でもトップクラスの性格を備えています。どこへ行っても歓迎されると思います。その一方で、残念ながら日本人男性は世界的に見て下位に位置づけられていることを認識しなければなりません。特に英国紳士は、女性にだけではなく、根本的には弱者に優しい性格を持っています。日本人男性は、より多くの海外経験を積んで、欧米の習慣を身につけることが重要だと思います。外科医は手術を好きにならないでください。技術の習得はもちろん重要ですが、その過程で患者のケアや安全を常に最優先に考えることが肝要です。外科医は自身の技術に自惚れることなく、常に患者への思いやりを持ち続けることが求められます。そのため、「手術が好き」と口にするよりも、患者のために手術を行うことへの責任感や使命感に燃えていなければならないと思います。
度付きのゴーグルです。学生時代は水泳部に所属していました。55歳から健康のために水泳を再開いたしました。水泳は伏して運動するため駆出された血液は直に脳に流れます。老化防止に役立っているように思います。
乳癌の診断に使用する探触子です。椎名教授とともにエラストグラフィを世界で初めて開発しました。これは最高18MHzの超音波を放射し、カラードプラ、エラストグラフィ機能に対応した最高級の探触子です。