西日本リハビリテーション学院卒業。理学療法士として病院勤務を8年間経験した後に独立し、心と体のケアをモットーにした、未来を育むトータルコンディショニングSERENを設立。現在は、全国から訪れるお客さんの施術と同時に、感情リリースの技術を全国の施術家へ伝える講師活動も展開中。著書に「筋リリースの教科書」「感情リリース」があり、いずれもAmazonベストセラー3冠を達成。
| 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 |
もともと理学療法士を目指したきっかけは、看護師である母の勧めでした。臨床現場で多くの患者さんと向き合う中で、次第に「身体だけを治す」ことへの限界を感じるようになりました。というのも、心に不調を抱えている方ほど症状が重く、回復にも時間がかかるケースを数多く経験してきたからです。高額なセミナーで知識を学び、技術を磨いても、どうしても良くならない方が一定数いる。この現実に直面したとき、構造以外に見落としている何かがあるのではないかと考えるようになりました。そこから心と身体を一体として捉える学びを深め、最終的に「感情リリース」という独自のアプローチへとつながっていきました。
私が仕事をする上で最も大切にしているのは、「完璧は難しくても、改善をやめない」という姿勢です。理想としては、どんな症状でも完全に治せることを目指していますが、現実には難しいケースがあることも理解しています。それでも、理学療法士として歩み始めた20代の頃から、「どんな人でも諦めず、必ず良くなる道を探す」という想いは変わっていません。だからこそ、読書や勉強、セミナーなどを通じて、新しい知識や技術を排他的にならずに取り入れ続けています。少しでも良い施術を提供するために改善を積み重ね、いつか現役を引退するまでに、限りなく理想に近い治療を実現したい。その想いを原動力に、日々仕事に向き合っています。
これまでの人生を振り返ると、最初から「これを必ずやり遂げる」と強い覚悟を持って動いてきた場面は多くありません。ただ、理学療法士として目の前に困っている患者さんがいて、治せない自分がいる。その状況を何とかしたいという想いが先にあり、勉強や技術習得を続ける中で、気づけば覚悟が固まっていきました。中でも最も大きな覚悟をしたのは、病院を辞めて独立した時です。安定した公務員の立場を手放す不安はありましたが、あの環境では理想の治療ができないと感じ、踏み切りました。売上が立たず後悔したこともありますが、「やると決めた以上、やり切るしかない」と腹をくくった瞬間が、今の自分をつくっています。
私にとってカッコイイ大人とは、自分なりの信念を持ち、その信念を手放さずに前に進み続けられる人です。社会に出ると、理不尽な状況や、自分の価値観を曲げざるを得ない場面に直面することも少なくありません。私自身も、そうした経験を何度もしてきました。一時的に屈したように見えることがあっても、心の中で信念を消さず、「必ずやり遂げる」と決め続ける。そして少しずつ力をつけ、最終的に自分の信念を形にできる人こそが、カッコイイ大人だと思っています。傷つくことや犠牲を伴っても、自分の核を失わずに歩み続けられる存在でありたいと考えています。
今後5年以内の目標として、「感情リリース」という、見えない感情を扱う施術体系を理学療法士や整体師をはじめとする施術家に広く普及させたいと考えています。感情や心を扱うことは、現状ではスピリチュアルだと誤解されることもありますが、感情が身体に与える影響は確実に存在します。それを特別なものではなく、当たり前の選択肢として学べる文化をつくりたいのです。長期的には、この技術を究極までシンプルな形へと進化させ、人の症状が生まれる本質的な原因にアプローチできる普遍的な方法論として、後世に残すことを目指しています。
私自身まだ道半ばではありますが、若い方に伝えたいのは、20代のうちにとにかく多くの知識と経験を蓄えてほしいということです。今すぐ役に立つか分からない学びでも構いません。本を読み、セミナーに参加し、人の話を聞き、失敗を恐れずに行動してほしいと思います。30代後半になると、20代に積み重ねた点が線となり、やがて面となって、自分だけの強みとして立ち上がってきます。それはAIやSNSでは代替できない価値です。「何を学んだか」ではなく、「誰がどう活かしたか」が問われる時代だからこそ、排他的にならず学び続けてほしいと思います。
ミヒャエル・エンデ「はてしない物語」です。読むたび新たな気づきがあり、施術と人生の本質を思い出させてくれる「初心に戻るための羅針盤」のような一冊です。
エーリッヒ・フロムの三部作「自由からの逃走」「愛するということ」「悪について」です。施術家として道を踏み外さないため、そして人間心理の本質を見失わないために、定期的に読み返しています。
