1980年秋田県由利本荘市に生まれる。奥羽大学歯学部を卒業後、東北大学大学院歯学研究科、顎口腔矯正学分野(主任教授:山本照子)に進学し、歯学博士および日本矯正歯科学会認定医を取得する。その後、マウスピース型矯正装置(インビザライン)の治療で有名な藤山光治先生に師事し、「ふじやま矯正歯科(京都市)」で6年間の勤務の後、2020年に「くろき矯正歯科」を開院した。
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中学生のときから漠然と医療に携わりたいという思いはありました。医師に憧れを抱き、大学受験するも医学部の門は叩けず、2浪の末、やむなく歯学部に入学しました。大学3年生までは、私にとっては多感な時期で、医者になりたい未練もあり、また幼い頃からしている卓球ばかりして、全く勉強に身が入りませんでした。実際に歯科診療を想定した実習では、思うように手は動かず、自分のセンスのなさを痛感し、歯科医師になるのを諦めようかとも考えたこともあります。ところが、大学4年生の時に「矯正歯科学」に出会い、歯が動くことの素晴らしさに興味が湧き、そこからこの分野にどっぷり浸かっています。学年の中でも成績が悪かったので、必死に勉強しました。大学4年時の矯正歯科の前期試験では学年で1番をとったこともあります。矯正歯科に出会えていなければ、歯科医師にすらなれていなかったと思います。
0.1mmの歯の移動で、咬合が全く違ったものになるめ、矯正歯科治療は、細かい治療計画と手技が要求される世界です。矯正歯科の分野もデジタル化が進み、治療後の歯並びを事前にシュミレーションすることが可能になってきました。私も、このデジタルによるマウスピース型矯正装置の治療計画作成に日々、追われています。ワイヤーによる矯正治療においてはもちろんのこと、マウスピース型矯正装置による矯正治療においても、コンマ1mmにこだわりをもって、仕事に取り組んでいます。
大学5年時の臨床実習で矯正歯科を訪れたとき、動的治療終了時の装置を撤去する場に出くわしました。その患者の治療前の資料と比較すると、服装やメイクなど前向きに変わっていました。また、顎変形症など、先天的に顎が歪んで変形している症例にも出会いました。矯正歯科が顎顔面領域で悩む患者の顔を多少なり変化させられ、さらには、前向きに内面も変化させることができる。患者にいい影響を及ぼす分野は、この分野だと、この道を進むべきだと覚悟を決めた瞬間でした。
人間の最大の欲求は、なりたい自分になること、つまり、自己を実現することだと、心理学者のアブラハム・マズローが提唱しています。私は、この矯正歯科を通して自己実現したい。そのためには、今を、一刻一刻を惜しんで全力でこの分野に体当たりしたい。私にとって、かっこいい大人とは、自分の得意とする分野を通じて自己実現に向けて努力している人ですかね。
マウスピース矯正治療では、デジタルで作製したゴールに到達するまで、実際に患者の口腔内でマウスピースの適合を確認する必要があります。この適合の確認は歯科衛生士でも可能です。しかし、私はこの作業を他人任せにはせず、自分の目でしっかり確認し、治療計画が正解だったのかを評価しています。もし、計画通りに歯が動かないのなら、何が原因で動かないのかを考察して次へ生かすべきだと考えています。また、毎回の診療で患者と会話をしながら寄り添うことで患者の深層心理に触れて、信頼関係が希薄にならないように努めたいです。そして、一人でも多く綿密な治療計画を立てて、そのゴールに突き進みたいです。私にとって、良いかみ合わせや口元をつくることは、美術家がよい作品を作るようなものです。矯正歯科医という美術家としてたくさんのいい作品作りに没頭したいですね。その結果、各学会の専門医や認定医が取得できるのなら、この上ない喜びです。
矯正歯科で開業するためには膨大な知識と正確で迅速な手技が要求されます。私もまだまだ未熟ではありますが、これを取得するには膨大な時間を費やし、苦しい場面もたくさん経験しました。特に大学院生時代は、日中は大学病院での診療、夜は学位のための研究、時間が足りない上に収入もない。この苦しいシーンは、勤務医時代も変わらない。苦しかったけど、将来必ず矯正歯科で開業したいという今の自分を信じて、矯正歯科に情熱をもって取り組めたから、自分が成長する毎日が楽しかった。何事も情熱を持って取り組めば、明るい未来は、自ずと待っています。まずは、今の自分を信じて。
ワイヤーを細い金属線でブラケット装置(歯に接着させたワイヤーを通す装置)に強く結ぶための道具です。ブラケット装置にワイヤーを縛って結ぶのですが、この動作をテンポよくこなすととても心地よい気分になります。
難症例の治療計画を立てる際、息詰まるときに眺めています。3次元的にみえるので、顔面と咬合全体を調和するイメージがみえるため、シンプルな治療計画が浮かび上がることが多いです。困ったときのヘルプ道具です。