東京歯科大学卒業後、同大学大学院に進学。研究の傍ら大学病院で矯正歯科臨床を学ぶ。大学院修了後は助手として東京歯科大学に勤務。臨床・研究・教育に13年間携わり、日本矯正歯科学会の認定医・指導医資格を取得。1998年、独立開業。その後、米国アングル学会正会員、日本矯正歯科学会臨床指導医の資格を得、現在は東京歯科大学、慶應義塾大学で非常勤講師として後進の指導を行いながら多方面で活躍中。
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高校時代の担任から、「手先が器用だから歯医者が向いているんじゃないか?」と言われ、自分の成績を顧みずその気になって歯科大学を目指したのがきっかけです。大学入学後は、とにかく分からないことだらけで、随分変な世界に飛び込んでしまったと思いました。でも親が医療系の仕事をしていたわけでもなく、自分には引き継ぐ診療所も無かったので、「食っていけるだけの知識と技術だけは身につけなければ!」という思いから、当時一番魅力的に見えた矯正歯科という道を選択しました。卒業後は幸運にも大学に勤務することができたので、そこで臨床・研究・教育といろいろ経験し、学ばせてもらえました。そして多くの仕事をこなしていくうちに、やはり臨床が一番やりたいことだという思いが強くなり、自分のスタイルで仕事ができるよう開業しました。それからはあっという間で、いろいろな人にお世話になって2018年の秋に開業20周年を迎えることができました。
「患者さんに安心を添えて帰っていただくこと!」これを一番大切にしています。技術的なことはもちろんですが、矯正装置をつけて診療所に通う期間が2〜3年でも、実際には患者さんが一生使う歯(歯並び)を扱い、それを整えるわけですから、特に事前の説明には私自らが相応の時間を使います。患者さんの希望と私達ができることとの間に差異があれば、早急に治療をスタートすることはしません。患者さんご自身も自分の歯並びをどの程度気にしているかを認識されていないことがあります。ただ何となくとか、見えない装置で行けるところまで…というのでは、ゴールが不鮮明で具体的治療プランを立てることができないのです。多くの患者さんの歯並びは、改善できるところはあっても、改善しなけばならないという状態とは限らないので、患者さんごとに真剣に話を聞いて、真摯にこちらの意見をお返しし、無理のない納得のゴールを共有することを重要視しています。
独立開業の時、肩書などとは関係なく自分の診療所を開設しようと決めた時が覚悟の瞬間でした。大学に勤務している時は、「経験を積んだ大学病院の先生」という評価がついてまわり、大きな看板に自分が守られていました。ところが、大学を離れるということは後ろ盾を自ら外し、マネージメントを含め、すべてを自分で背負わなければならないことを意味しています。新天地での評価を一から積み上げていかなければならないわけです。とても大きな不安を抱えての船出でしたが、不正咬合を治すという臨床力には絶対的な自信があったので前に進むことができました。今になって振り返ると、自身の感性を信じてブレなかったことが根拠のない自信となり、当時の自分を動かしていたんだと思います。
いいわけをしない人。プロとして仕事をするには、自分の出した結果をそのまま受け入れる度量が必要だと思います。良い結果が出ても驕り高ぶること無く、また思い描いた結果が得られなくても、目を背けたり素通りしたりせず、真摯に向き合って次の機会には同じ結果を招かないよう努力を惜しまない姿勢が大切だと考えます。多くの仕事をこなしていく中には、ときに逃げ出したくなることもあるでしょう。しかしそのような時こそ、どう立ち回って危機を回避するかが問われ、その人が評価されると思います。さり気なくスマートに仕事をこなす大人の魅力を身につけたいと思っています。
自分が経験してきたことを伝えることで、次世代の人たちがそれを有効に活かせるようにしたいです。時代の流れと共に新しい材料が誕生したり、それに伴う技術革新が生じたりするのは当たり前です。先人がたいへんな努力の末に得た知見を自分は授けてもらい、それを発展させるべく微力ながら努力を続けてきたつもりです。今後も努力は続けますが、駅伝のように一人ひとりが力を出し切って襷をつなぐというよりも、400mリレーのようにトップスピードで走っている中でバトンを次の世代に渡したいという気持ちでいます。その方が先人からの貴重なバトンをスムースに早く繋ぐことが出来ます。自分が30年かけて身につけてきたことを整理して、なるべく早いタイミングで若手に渡してあげたいという気持ちで今は努力しています。
自分の感性を信じてほしい!ただし感性のアンテナに埃が被っていたり、アンテナが錆びていたりしないかを常にチェックし、何かを相手に伝えるときは易しく分かりやすくして発信するよう心掛ければ理解者は必ず現れると思います。諦めず頑張ってください。
歯科医師になって2年目、駆け出しの矯正歯科医だった自分が初めて参加した海外の専門学会、スケールの違いに驚き、自分がまだ何もわからないことを実感した思い出の大会でした。
軽くて持ち運びに便利なので講義や講演など出張時にはいつも持っていきます。スケジュール管理やメールの送受信、お気に入りの音楽など携帯と並んで自分の必須アイテムです。