覚悟の瞬間(とき)

医療法人社団千優会 藤沢在宅クリニック 院長 米田浩基
よねだひろき

米田浩基

大阪府生まれO型
職業:医療法人社団千優会 藤沢在宅クリニック 院長
趣味:読書、映画鑑賞
座右の銘:不撓不屈、一期一会

慶應義塾大学医学部卒業。医師免許取得後、脳卒中を深く診るため脳外科の専門病院などに勤務。日本脳神経外科学会と日本頭痛学会の専門医を取得する。介護保険支援専門員(ケアマネージャー)の資格を取得したのち、かねてから興味のあった在宅診療の現場に飛び込む。2014年、在宅支援診療所である藤沢在宅クリニックを設立。2015年医療法人社団千優会の認可が下りる。法人運営のかたわら、現在も日々在宅診療に奔走している。

オフィシャルサイト

来歴

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なぜ今の仕事に?

私がごく幼い頃、脳卒中になって寝たきり状態になった祖母と一緒に住んでいました。その頃、公的なサービスはほぼなく、家族の介護負担も担当もあり、大変であったのですが、期せずして介護される側になってしまった祖母が流した、物言わぬ涙が、今も胸に焼きついています。あの時、祖母は確かに助けを求めていたのに、まだ幼すぎた私は、何も彼女にしてあげることができませんでした。その後祖母は亡くなってしまったのですが、一人の医師として、人間として、介護が必要なお年寄りにどんなことができるのだろうか、どんな声がけをしたら良いのだろうか、そういったことをずっと考えてきました。脳卒中をみる専門家になりたくて、まず脳神経外科になったのですが、障害を抱えた患者さんは数年、数十年間を生きていくのに病院の医師としてはほんの数週間、数ヶ月しかその方の人生に寄り添うことができません。冷たい病院の医者から抜け出してもっと長期的な患者さんのケアがしたくて、在宅医療の現場に飛び込みました。

現在の仕事への想い

見えない力。在宅医療には底知れぬパワーが存在します。生まれ育った土地、家、気をはらなくて良いご家族に囲まれ、落ち着いた環境で、今まで培ってきた生活と病気を共存させ生きていく在宅医療は「第3の医療」とも呼ばれます。古臭いイメージがあるかも知れませんが、私は未来型の医療と考えています。たとえば軽い病気で入院したとします。入院した途端に自分は病気だという事を強く認識してしまい、気持ちが滅入る事で別の病気が出てきたり、家にいた時は食べられた方が食べられなくなった、歩けていた方が急に歩けなくなったという患者さんはとても多いんですね。なるべくであれば入院をしない方が患者さんの生きる力になるのではないかと、常々考えてきました。そこで在宅医療はどうかということなんですが、夕暮れから夜間にかけて、患者さんや介護をされているご家族はとても不安になるんです。私は常に肌身離さず携帯電話を持っているのですが、不安な思いを傾聴して、答えます。いつでも医師に電話をしてもよいという安心感。そうしてみなさんの不安を和らげてさしあげることが、在宅医の使命だと思います。逆に言うと、そういう信念がないと24時間365日対応のオンコール電話を受けることはできないのではないかと思います。

あなたにとって覚悟とは

クリニックを立ち上げると決めた時がいちばんの覚悟の瞬間でした。きっかけは2014年の診療改訂で急にドーンと点数が下がった時です。医療従事者でないと聞きなれないかも知れませんが、この年の診療改訂は在宅医療の地盤を根底から揺るがすものでした。簡単にいうと、これまでの医療をしていく経営が成り立たず、潰れてしまうという意味です。多くの病院、クリニックの先生が患者さんを「もう診られない」と言って、見放す結果に結びつきました。多くの患者さんが医療をうける道を、奪われたのです。勤務医としてその現場を目の当たりにした私は、過去への思いから、患者さんを見捨てることがどうしてもできませんでした。一度決めたからには最後まで皆さんの人生に寄り添いたい、それが私の天命ではないかと考えました。そんな気持ちで、スタッフもほとんどおらず、悪条件の揃っている中ではありましたけれど安定した勤務医の立場を捨て、300人以上の患者さんを引きつぎ、決死の覚悟で開業しました。自分を必要としてくださる患者さん達の人生を支えるためであれば自分の命をかけてよいとその時覚悟しました。現在では設立から3年が経ち、患者さんは500人弱となりましたが、覚悟の瞬間は毎日続いています。毎朝毎朝、今日の仕事を全身全霊でやりきろうと、そういう覚悟をもって職場に来ています。

カッコイイ大人とは?

仕事は心を込めて、全身全霊で行い、全て自分で責任を負って行う。逃げない、言い訳を言わない。自分を省み、時には自己批判も辞さない。「武士は食わねど高楊枝」という言葉がありますが、たとえ環境が貧しくかったり、置かれている状況が劣勢であったりしても、自らの心に矜持と覚悟を持って、人生を前向きに生きている大人のことをカッコイイと思います。

今後に向かって

現在500人弱の患者さんがおられますが、その方のお顔、人生観や死生観、背景、住んでおられる環境、ご家族の思いなどを、私は全て覚えています。500人の人生の歴史があれば500通りの医療があります。500通りのお声のかけ方があると思っています。つまり、在宅医療こそ患者さんの全てを見る究極のかかりつけ医であると、私は考えています。在宅医療は「第3の医療」ともいわれて次世代の医療のかたちとして期待されていますが、一方では玉石混淆で、心ない診療を行っているクリニックも全国には多く存在すると聞いています。私のクリニックの概念であったり、医療の方針を、もっと広く世に広めて生きたいと考えています。私たちを必要としていただける患者さんに、その方にあったオーダーメイドの医療と、その方のための「優しさ」を届けることを目標にしたいと、考えています。患者さんが住み慣れた家で過ごすことで芽生えてくる見えない力を、精一杯支援しながら人生の夕暮れを共に歩みたいと思っています。人のからだとこころには、無限の広がりがあり、いくら学んでも終わりは見えません。この無限の可能性に喜びを感じていますので、今後も楽しんで夢を追っていきたいです。

若者へのメッセージ

今は表面的な情報が溢れかえっているがゆえに、本当に重要なことや悩みに辿りつきがたい時代なのではないかと思います。スマートフォンもいいですが、たまには古典を読んだり、色々な場所を旅行したりして、本物に触れる機会をとってみてください。仕事も、人生も、自分の捉え方や心の持ち次第で、無味乾燥なものに思えたり、宝石の輝きを放ったりします。自由な発想で世界を見てみましょう。

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聴診器

医師としての自分のアイデンティティとなるものです。携帯式超音波や迅速採血キット、ノートパソコンやiPadなど、様々なものを持ち歩いていますが、全ての基本になるものがこの聴診器だと思います。

アルバム

患者さんとの思い出が詰まったアルバムです。患者さんが作ってくれた小物、いただいた手紙、記念に撮った数々の写真。中には用意をしていたのに、お渡し出来なかったお誕生日カードもあります。それぞれが、思い出のかたまりです。